嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
(エラのことですから、リーゼロッテ様の異変に気付いてない筈はないでしょうねぇ)

 大方リーゼロッテに口止めされていると言ったところか。エラにとっては未だリーゼロッテの方が、マテアスよりも優先順位が上ということだろう。夫としては寂しくもあるが、自分とてエラよりもジークヴァルトを優先せざるを得ない立場にいる。

「旦那様、怒りませんから隠さず正直におっしゃってください」
「いや、別に何もない」

 ジークヴァルトはすいと顔を逸らした。何かを隠しているのが丸わかりだ。

「では、エマニュエル様のおっしゃることは、気のせいということでよろしいのですね?」
「ああ」

 こういったとき、エマニュエルの勘が外れることは滅多にない。目を見合わせた姉に向けて、マテアスは小さく頷いた。

「念のために一応エラにも確認しておきます。何、念のためです。リーゼロッテ奥様に何かあっては一大事ですからね」

 ぐっと喉を詰まらせて、ジークヴァルトは口をへの字に曲げた。ここまで来ればあともう一押しだ。

「で、旦那様。白状するなら今のうちですよ?」
「何もない。何もないが……異形がらみで少しきつく言った覚えはある」
「きつく? 異形がらみで?」
「ああ。この前行った茶会でだ」

 それ以上は頑として口を割ろうとしなかったため、結局マテアスはその夜エラに確認を取った。どうやらリーゼロッテは、ジークヴァルトに心配をかけたとずっと落ち込んでいたらしい。

(夫婦喧嘩とまでいかないところが、おふたりらしくもありますけどねぇ……)

 いっそ派手に喧嘩してくれた方が、分かりやすくてフォローも入れやすいのに。ついそんなことを思ってしまう。

 今後似たようなことがあったら、マテアスにも相談するようエラには確約を取り付けた。今回はエマニュエルの助言もあり、ふたりの仲修復のために貴族街お買い物計画が練られることとなった。

 いつまで経っても不器用な(あるじ)に呆れつつ、なんとか日程を調整したマテアスなのだった。

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