嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 馬車に揺られながら、ジークヴァルトの顔を見上げる。

(貴族街でお買い物だなんて、急に一体どうしたのかしら……)

 誕生日でもないし、いつもなら行商を呼んで屋敷内で欲しいものを選んでいるところだ。お出かけはもちろんうれしいが、忙しいジークヴァルトを思うとそれが不思議でならなかった。
 現に今もジークヴァルトは書類をめくり続けている。無理やりに時間を空けたようにしか思えなくて、また負担になっているのかと気分が落ち込んできてしまった。

(駄目駄目、せっかくのお出かけなんだもの。ここはちゃんと素直によろこばなくちゃ)

 気を回しすぎて結果空回りしてしまうのは、昔から自分の悪い癖だ。よろこびを表現するために控えめなガッツポーズを作っていると、ジークヴァルトに顎を(すく)われた。

「どうした?」
「いえ、今日はヴァルト様とおでかけできてとってもうれしいなって」
「ふっ、そうか」

 小さくこの唇を(ついば)むと、ジークヴァルトはすぐ書類に視線を戻した。文字を追う真剣な眼差しが格好良すぎて、ぽぅっとなって見とれてしまう。

「どうした?」
「いえ、ヴァルト様、すごくかっこいいなって……」

 つい本音が漏れてしまって、頬を染め慌てて口元を押さえた。

「リーゼロッテ……お前、本当に懲りないやつだな」

 呆れたように言われ、先ほどより深く口づけられる。

「あ……ん、馬車の中で口づけは一時間に一回だけだって約束を……」
「あんなことを言うお前が悪い」

 唇に移った(べに)を親指の腹で(ぬぐ)いながら、今夜は覚悟しておけよと、ジークヴァルトはとても悪い顔をした。

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