嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
 休憩で入った高級カフェで、ルチアはふかふかのソファに居心地悪く腰かけていた。煌びやかな店にあちこち連れていかれて、たのしむどころか気疲れしか感じない。値札もついていないような物ばかりが並べられていて、手に取ることすら臆してしまった。
 養子に入ったブルーメ子爵家は、貴族の中でも質素な方なのだろう。公爵家に正式な客人としてお邪魔して、だんだんとそんなことが分かってきた。

「ルチア様ぁ、本当にお買い物はそれだけでよろしかったのですかぁ?」
「ええ」
「ですが最後まで迷ってらしたもうひとつの方がぁ、値打ちのあるいい物でしたのにぃ」

 ベッティがどうしても何か買えと言うので、仕方なしにいちばん安そうな小さな石のネックレスを選んだ。それでも庶民にしたら高価な品だ。値段が書かれていないので、もし高過ぎてしまったらどうしようと内心冷や冷やしているルチアだった。

「お値段なら気にしなくってもよろしんですよぅ? ブルーメ家はラウエンシュタイン家からの援助で潤っているようですからぁ」
「いいの、これで十分よ」

 早く帰りたいが、リーゼロッテたちと合流するまでまだ時間があるらしい。エマニュエルだけは眠くてぐずつくランドルフを連れて、先に馬車へと向かっていった。

「あなたって子守りもできるのね?」
「子守り上手な侍女は何かと重宝されますからねぇ。子守りが専門の使用人もおりますがぁ」
「子守り専門……それならわたしにもできるかも」
「ルチア様ぁ? まだ働こうだなんて思ってらっしゃるんですかぁ? ルチア様はですねぇ、もう雇われる側ではなくて雇う側なんですよぅ」
「そんなこと、あなたに言われなくても分かってる」

 ここの所、うるさく言われ過ぎてもううんざりだ。うんざりし過ぎてキリキリと胃が痛んでくる。

「ベッティ……お腹痛い」
「それはいけませんねぇ! 今すぐおくすりを用意いたしますのでぇもう少しご辛抱くださいましぃ」

 店に事情を話して、奥の休憩室へと連れていかれる。小部屋だが高級な調度品が並べられ、窓からは見栄えの良い雪の庭が見下ろせた。

「具合はいかがですかぁ?」
「ええ、少し落ち着いてきたみたい」

 まだ外は明るいが、あと数時間もしたら日没の時刻だろう。考え込むように外を眺めていたルチアが、ふいにベッティの顔を見た。

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