嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「がんばんな。あんたにもしあわせになれる場所がきっと見つかるよ」

 これから行く先に、本当にそんな場所などあるのだろうか? 明るい未来など描けなくて、上手く言葉を返せない。もう一度頭を下げてから、ルチアは裏路地を駆けだした。

 街の中心部に戻り、教えてもらった店でネックレスを現金に換えた。かなり足元を見られてしまったが、時間もなかったため諦めるより仕方がない。お金を手にできただけでも良しとしなければ。

 切り替えて辻馬車を探す。辻馬車は同じ方面に行く者が乗り合うため、安く移動できる平民の交通手段となっている。貴族のような立派な馬車ではなく、(ほろ)のついた荷台に人が乗り込むものだ。こんがり亭のある街に行く馬車はそれなりに数があるので、すぐにでも見つかるだろう。

(あ! あの男たち……)

 人波の中に先ほどのごろつきたちの姿を認め、ルチアは身を固くした。姿が違うので見つかることはないと思うが、慌てて反対方向へと足を向けた。
 気になって振り向くと、ごろつきのひとりと目が合ってしまう。その男は狙いを定めたハンターのような顔をした。ほかのごろつきたちも引き連れて、まっすぐルチアを目指し歩いてくる。

 常習的に若い女を狙っているのかもしれない。ルチアが駆け足になると、男たちも同じ速度で追ってきた。
 互いに声をかけ合って、男たちはルチアを追い込もうとしてくる。道行く人間は誰も助けようとしてくれない。前方に今まさに出発しそうな辻馬車が見え、ルチアはそこへ向かって全速力で駆け出した。

「待って! わたしも乗ります!」

 加速していく馬車に必死に追いすがる。中にいた男が、ルチアの腕をひっぱりあげてなんとか馬車へと乗せてくれた。

「あ、ありがとうございました」
「ああ、間に合ってよかったね」

 込み合った席を詰めてもらって、ルチアも座ることができた。ほっと息をつき周囲を見回す。乗り合わせた者たちはみな、疲れた顔をして黙りこくっていた。居心地悪くがたごとと揺れる馬車に、冷たい隙間風が吹き抜ける。

「今から家に帰るのかい? わたしたちは里帰り中でね」

 先ほど助けてくれた男に声を掛けられる。その横には、眠る子供を膝に乗せた女が寄り添って座っていた。

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