嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「いえ、わたしにはもう家族がいないから……」
「ああ、それは悪いことを聞いたね」
バツが悪そうに男は、ぐっすりと眠る我が子に視線を落とした。
「もう、あなたったら。そうやって誰彼なく話しかけるから」
「まったくだ、これからは気をつけるよ。君も、本当にすまなかったね」
「わたし別に気にしてませんので」
助けてもらった恩もある。それにルチアが天涯孤独なのは、この男のせいという訳でもないだろう。ただ幸せそうな家族を目の前にすると、重苦しい苛立ちが抑えようなく腹の奥からこみ上げる。
(どうしてわたしには何もないの?)
帰る家。一緒に食卓を囲む家族。やさしく抱きしめてくれるひと。
誰もが当たり前のように持っている。無条件に安心して過ごせる、そんな居場所を。
「でも、だったら新しく作るしかないわね」
「作る? 何を?」
ふいに女に言われ首を傾げた。
「新しい家族をよ。わたしもあなたと似たような立場だったから」
「新しい家族……」
「そうよ。わたしもいろいろあったけど、好きな人と結ばれて今はこうやって幸せになれたの。だからきっとあなたにもどこかでいい男が待ってると思うのよ」
いい男と言われ、真っ先にカイの顔が浮かんだ。だがその考えはすぐに打ち消した。逃げ出してきた今、貴族の彼とどうこうなれるはずもない。
「あら、いやだ。わたしの方が余程お節介ね。余計なこと言って悪かったわ」
「いえ……」
会話が途切れた馬車で、ルチアはまだ平民だった頃にこんがり亭で過ごした日々を思い出していた。ダンとフィンは本当に親切にしてくれて、あのふたりならルチアの家族になってくれるだろうか。
(駄目よ。わたしがいたら、きっとふたりに迷惑をかけてしまう……)
ルチアを匿っていることが分かったら、ブルーメ家から何か処罰を受けるかもしれない。今さらのように、こんがり亭に行くのもためらわれてしまった。
「ああ、それは悪いことを聞いたね」
バツが悪そうに男は、ぐっすりと眠る我が子に視線を落とした。
「もう、あなたったら。そうやって誰彼なく話しかけるから」
「まったくだ、これからは気をつけるよ。君も、本当にすまなかったね」
「わたし別に気にしてませんので」
助けてもらった恩もある。それにルチアが天涯孤独なのは、この男のせいという訳でもないだろう。ただ幸せそうな家族を目の前にすると、重苦しい苛立ちが抑えようなく腹の奥からこみ上げる。
(どうしてわたしには何もないの?)
帰る家。一緒に食卓を囲む家族。やさしく抱きしめてくれるひと。
誰もが当たり前のように持っている。無条件に安心して過ごせる、そんな居場所を。
「でも、だったら新しく作るしかないわね」
「作る? 何を?」
ふいに女に言われ首を傾げた。
「新しい家族をよ。わたしもあなたと似たような立場だったから」
「新しい家族……」
「そうよ。わたしもいろいろあったけど、好きな人と結ばれて今はこうやって幸せになれたの。だからきっとあなたにもどこかでいい男が待ってると思うのよ」
いい男と言われ、真っ先にカイの顔が浮かんだ。だがその考えはすぐに打ち消した。逃げ出してきた今、貴族の彼とどうこうなれるはずもない。
「あら、いやだ。わたしの方が余程お節介ね。余計なこと言って悪かったわ」
「いえ……」
会話が途切れた馬車で、ルチアはまだ平民だった頃にこんがり亭で過ごした日々を思い出していた。ダンとフィンは本当に親切にしてくれて、あのふたりならルチアの家族になってくれるだろうか。
(駄目よ。わたしがいたら、きっとふたりに迷惑をかけてしまう……)
ルチアを匿っていることが分かったら、ブルーメ家から何か処罰を受けるかもしれない。今さらのように、こんがり亭に行くのもためらわれてしまった。