嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
「今回の失態はぜんぶ油断したわたしの責任ですぅ。ほんとうにすみませんでしたぁ」
「はは、ベッティを出し抜くなんて、ルチアもなかなかやるね」
「笑いごとではありませんよぅ」

 ベッティの手には、ルチアが身に着けていた服と貴族街で買ったというネックレスが握られている。どうやって貴族街から出ていったのか、ルチアの辿(たど)った痕跡(こんせき)は驚くことに下町で見つかった。証拠の品を買い戻すのに、さすがのベッティも難儀したようだ。

「民家で服を交換してからネックレスを売ってお金に換えたようですぅ。気になったのはこの黒いマントなんですがぁ、こちらはルチア様のものではないんですよねぇ。恐らくルチア様を貴族街から連れ出した人物の所持品ではないかと思われますぅ」
「ふぅん? 貸してみて」

 手に取るまでもなく上質な仕立てのマントだ。裏地を隈なく探り、さりげなく施された刺繍に目を止める。

「これは……」

 この刺繍は、どう見ても王家の者が着る衣装にのみ施される文様だ。手引きをしたものが王族の誰かならば、ルチアが何者なのか確実に知っていたはずだ。あまり執拗に詮索すると、(やぶ)(つつ)いて蛇が出る可能性もある。

「この件は後回しでいいや。で、ルチアの足取りはどこまで確認取れてるの?」
「辻馬車に乗ったのは確実なんですがぁ、肝心の行き先がまだつかめていない状況でしてぇ」
「そっか。ルチアが行きそうなところと言ったら、まずはこんがり亭かな? ひとまずベッティはそっちを確認してきて。オレはちょっと別件で用事があるから、それが済んだらまた合流する」
「承知いたしましたぁ」

 落ち込んだ様子のベッティの頭を、いい子いい子と何度か撫でる。

「ほかの人間も動かしてるし、すぐに見つかるよ」
「カイ坊ちゃまはルチア様が心配じゃないんですかぁ?」
「うん、まぁ、何かあってもルチアが選んだ道でしょ」

 授かった託宣を果たすまで、ルチアが死ぬような目に合うことはない。もしも飛び出した先で異形に殺されたとしたら、それは龍の導きでしかないのだろう。

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