嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 くーくーと寝息を立てる横顔を覗き込む。揺れるランプの炎に照らされて、ルチアの赤毛はいっそう鮮やかな光沢を放っていた。
 背後から囲うようにテーブルに手をつくと、カイはその耳元に唇を近づけた。

「ねぇ、ルチア。こんなところで何してるの?」
「ふぇっ」

 びくっと顔を上げたルチアが反射的に振り返った。触れそうな距離で、金と琥珀の瞳が見つめ合う。

「へ、あ、カイ、なんでここに……」
「なんでって、ここオレん()だし。それはこっちの台詞でしょ?」
「う、あ、それは」
「それは?」

 さらに顔を近づけると、閉じ込められた腕の間でルチアは小さく縮こまった。あうあうと言葉が出ないでいる様子をおもしろく観察していると、ルチアのお腹がぎゅうぎゅるぎゅるぅと盛大な音を立てた。

「ち、違うのこれはっ」
「はは、ほんと無計画に飛び出してきたんだ」

 図星を刺されたルチアが口をつぐむ。その唇に赤みがないのに気がついて、カイはルチアから体を離した。

「とりあえず、下に行こうか。ここじゃ寒いでしょ」
「でも犬が……」
「リープリングなら今はいないよ。さっきお使いに出したから」

 暖炉の火を大きくして、カイはルチアのために紅茶を淹れた。保存のきく焼き菓子とともに、テーブルの上にサーブする。

「こんなものしかないけど、どうぞ、召し上がれ?」

 頷くとルチアは素直に手を伸ばした。よほど寒かったのか、まずは紅茶に口をつける。

「あったかい……」

 ほっと息をつき、もくもくと菓子を頬張っていく。かと思うと手を止めて、向かいに座るカイの顔を居心地悪そうに見上げてきた。

「なに?」
「そうやってじっと見られてると食べづらいんだけど」
「いや、さっきまで顔色が悪かったからさ。でもひと心地ついたみたいで安心したよ」

 裏心なく笑顔で言うと、唇を噛みしめルチアは小さく俯いた。

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