嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ルチアがいないとどうにも食事が味気なく感じてしまってな。温室のプリムラを見ては、毎日ルチアのことを思い出していたのだな、うん。実のところ、このまま領地に連れて帰りたいと思っていたくらいであるのだ」
「え……?」
子爵が慌ててやって来たのは、ルチアに何かがあったら援助金を打ち切られて困るからだと思っていた。そんな穿った見方をしていたことに、罪悪感がこみ上げてくる。
「だが引き続きここで療養し、ルチアはしっかり回復せねばな。また領地でともに過ごせる日を楽しみにしておるのでな、うん」
「はい、わたしも……たのしみにしています」
いつだって子爵はやさしく手を差し伸べてくれていた。それを見ようともせず、勝手に心を閉ざしていたのはルチアの方だ。
誰も自分を分かってくれないと、自ら歩み寄ることを一切してこなかった。そのことにようやくルチアは気づかされた。
「元気そうな顔も見られたことであるし、さて、次は公爵家に挨拶に行って来ねばな」
「……ごめんなさい、本当に迷惑をかけてしまって」
「いやなに、父らしきことをするのもなかなかに楽しいのであるからして、ルチアは案ぜずともよいのであるな」
「ありがとうございます、お義父様」
「うむ、すべてわしに任せておきなさい」
どこか頼りなく思えていた義父が、いつになく大きく見えた。なんだかくすぐったい気持ちになって、ルチアは子爵を送り出した。
再びひとり取り残された部屋で、飲みかけのカップに視線を落とす。あの夜、カイが淹れてくれた紅茶はとても温かかった。
ふいに体の中心が熱を持つ。何をしていても、繰り返しカイとの行為が思い起こされた。上気した頬を両手で包みこみ、うれしさと恥ずかしさでついつい口元が緩んでしまう。
どうしてカイとあんなことになったのか。信じられないという思いが、未だルチアの心を大きく占めていた。
(初めては痛いだけだって聞いてたのに……)
男女の夜の営みに関する話を、子供の頃からルチアは幾度も耳にしてきた。下町の女たちの言葉は明け透けで、ルチアは興味津々で聞いた覚えがある。
処女はとにかく痛くて血が出るだとか、回数を重ねるごとに気持ちよくなれるだとか、へたくそな相手ではいつまで経っても痛いだけだとか、相性が大事だとかそんな下世話な体験話だ。
「え……?」
子爵が慌ててやって来たのは、ルチアに何かがあったら援助金を打ち切られて困るからだと思っていた。そんな穿った見方をしていたことに、罪悪感がこみ上げてくる。
「だが引き続きここで療養し、ルチアはしっかり回復せねばな。また領地でともに過ごせる日を楽しみにしておるのでな、うん」
「はい、わたしも……たのしみにしています」
いつだって子爵はやさしく手を差し伸べてくれていた。それを見ようともせず、勝手に心を閉ざしていたのはルチアの方だ。
誰も自分を分かってくれないと、自ら歩み寄ることを一切してこなかった。そのことにようやくルチアは気づかされた。
「元気そうな顔も見られたことであるし、さて、次は公爵家に挨拶に行って来ねばな」
「……ごめんなさい、本当に迷惑をかけてしまって」
「いやなに、父らしきことをするのもなかなかに楽しいのであるからして、ルチアは案ぜずともよいのであるな」
「ありがとうございます、お義父様」
「うむ、すべてわしに任せておきなさい」
どこか頼りなく思えていた義父が、いつになく大きく見えた。なんだかくすぐったい気持ちになって、ルチアは子爵を送り出した。
再びひとり取り残された部屋で、飲みかけのカップに視線を落とす。あの夜、カイが淹れてくれた紅茶はとても温かかった。
ふいに体の中心が熱を持つ。何をしていても、繰り返しカイとの行為が思い起こされた。上気した頬を両手で包みこみ、うれしさと恥ずかしさでついつい口元が緩んでしまう。
どうしてカイとあんなことになったのか。信じられないという思いが、未だルチアの心を大きく占めていた。
(初めては痛いだけだって聞いてたのに……)
男女の夜の営みに関する話を、子供の頃からルチアは幾度も耳にしてきた。下町の女たちの言葉は明け透けで、ルチアは興味津々で聞いた覚えがある。
処女はとにかく痛くて血が出るだとか、回数を重ねるごとに気持ちよくなれるだとか、へたくそな相手ではいつまで経っても痛いだけだとか、相性が大事だとかそんな下世話な体験話だ。