嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 特に初めての時はどうだったのかを、女たちは事細かに教えてくれた。それを聞いて怖くなってしまったが、気持ちよさを語る女のうっとりとした瞳が、同時にルチアの脳裏に焼き付いた。
 自分はどんな相手とどんな初めてを迎えるのだろう。そんな妄想をしてみたりもした。いざそのときを迎えたものの、あまりにも事が突然過ぎて、恐怖など感じる暇もなかった。

 唐突な口づけの後そのまま押し倒されて、何が起きたのか初めは理解できなかった。カイの手が服の中に入ってきたときは驚きしかなくて、さすがのルチアも抵抗しかかった。なのに触れられる場所すべてが熱くなり、すぐに何も考えられなくなってしまった。

「カイ……」

 甘いため息が口をつく。カイが触れた場所が切なく(うず)いて、あの場面を思い出すたびに居ても立ってもいられなくなる。
 とにかく信じられないくらいに気持ちがよかった。まるで天国に昇り詰めていくような感覚で、あの濃密な快楽を求め、夢想が際限なくエスカレートしていく。

『ルチア』

 熱い吐息が耳元で囁く。(まき)()ぜる音。炎に照らされる汗ばんだカイ。されるがままルチアは必死にカイの首筋にしがみついた。

 夜の営みは子をなす目的でするものだ。貴族の淑女教育で、ルチアはそんなふうに説明を受けた。
 だが母は言っていた。それは心を通わせた者同士が、愛を確かめ合うためにするものなのだと。ルチアが初潮を迎えたときに、丁寧な言葉でアニサは男女のまぐわいについて包み隠さず教えてくれた。

(わたし、カイと愛しあったんだ……)

 じわじわとよろこびが湧き上がる。うれしくて、でもなんだか気恥ずかしくて、クッションを胸にぎゅっと抱きしめた。(たま)らずに足をばたつかせ、長椅子の上を左右に転がり身悶(みもだ)える。

「きゃあっどうしようどうしよう、わたしカイと! カイと愛しあっ、ぁいったぁあいっ」

 (よじ)った腰に痛みが走る。クッションに顔をうずめ、悶絶(もんぜつ)しながら身を丸め込んだ。

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