嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「ルチア様ぁ、安静にしてないといつまで経っても回復しませんよぅ」
「ベッティ……」
「あ、お紅茶冷めてしまいましたねぇ。今すぐ淹れなおしますぅ」

 手際よくカップが新しいものに差し替えられる。用済みの茶器を乗せたワゴンを押して、ベッティはすぐ部屋を出て行こうとした。

「ねぇ!」
「はい、何でしょうかぁ」

 ベッティの態度は前と変わらず同じまんまだ。貴族街でルチアが逃げ出したことも、カイとそうなったことについても、詮索どころか言及ひとつしてこない。

 ルチアはカイの別宅で三日間を過ごした。ふたりで愛し合ったあと、ベッティが湯あみや食事の世話をしてくれた。その間カイはどこかに出かけていたようで、疲れ果てて眠っていると、いつの間にか戻ったカイと再び夢のような時間を過ごした。

 そんなことを繰り返した三日目の朝、向かい合わせに横たわった寝台で、カイは小さく笑んできた。

「ルチアはさ、もうブルーメ家に戻ろうか」
「え? いやよ、わたしずっとカイとここにいる」
「オレもそうしたいのは山々だけどさ。見つかったら連れ戻されて、二度と会えなくなるけどそれでもいいの?」
「そんなのいや!」
「だったら一度帰ろう? ね、ルチア」

 すぐに返事ができなくて、ルチアは唇を噛みしめた。

「オレ、またすぐに会いに行くからさ」
「本当?」
「うん、約束する。それとルチア。オレとのことは、絶対に誰にも話しちゃ駄目だからね?」
「どうして?」
「ふたりでこうしていることが子爵に知れたら、やっぱり二度と会わせてもらえなくなるよ。だからさ、ちゃんと内緒にできる?」

 小さく頷くと、カイはやさしく口づけてくれた。交差した素足を絡めあい、もう一度ふたりで愛を確かめ合った。

 その日の午後にブルーメ家のタウンハウスに戻り、幾日も経過している。それなのにカイが会いに来る気配は一向になかった。

「ねぇベッティ、カイからは何も連絡はない?」
「特にないですねぇ」
「そう……」

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