嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
日中ジークヴァルトは執務で忙しいし、侍女長となったエラもずっとリーゼロッテのそばにいるわけではない。暇を持て余しすぎて、結局は縫いぐるみ相手に独り事を言うしかない毎日だ。サロンで小鬼相手に戯れるのも自粛している。貞子の件があったので、とにかく今はジークヴァルトに心労をかけたくなかった。
「怪我が良くなったらルチア様も戻ってくるって言うし、それまでの辛抱ね。ベッティもいたら、あなたたちの腹話術をやってくれないか頼んでみようかしら」
毒舌だったアルフレート二世が懐かしい。囚われていた神殿でのことは、今では随分と遠い記憶となっている。あまり思い出したいものではなかったが、あの日々で得たものはリーゼロッテにとっては大きいものだった。
「感謝の気持ちを忘れてしまっては駄目ね……」
なんでもしてもらえる生活に戻って、その教訓が薄らいでしまっている。こうしてジークヴァルトとともに在れる奇跡を、これからも大事に噛みしめて生きていかなければ。
ふとアルフレート二世が言いそうなことがリーゼロッテの頭の中をよぎった。試しに唇を動かさず甲高い声を出してみる。
『もう、リーゼロッテってば真面目なんだから!』
言ってみて、ひとりぷっと噴きだした。本当にアルフレート二世なら言いそうだ。
「それにしても腹話術って案外難しいのね」
ベッティを真似てみたものの、ちっともそれらしくならない。唇は動いてしまうし、リーゼロッテがしゃべっているのが丸わかりだ。
その日は腹話術の練習に明け暮れて、戻ったジークヴァルトにじぃっと見られていたことに気づくまで、リーゼロッテは縫いぐるみ相手にひたすら甲高い声を出し続けた。
「怪我が良くなったらルチア様も戻ってくるって言うし、それまでの辛抱ね。ベッティもいたら、あなたたちの腹話術をやってくれないか頼んでみようかしら」
毒舌だったアルフレート二世が懐かしい。囚われていた神殿でのことは、今では随分と遠い記憶となっている。あまり思い出したいものではなかったが、あの日々で得たものはリーゼロッテにとっては大きいものだった。
「感謝の気持ちを忘れてしまっては駄目ね……」
なんでもしてもらえる生活に戻って、その教訓が薄らいでしまっている。こうしてジークヴァルトとともに在れる奇跡を、これからも大事に噛みしめて生きていかなければ。
ふとアルフレート二世が言いそうなことがリーゼロッテの頭の中をよぎった。試しに唇を動かさず甲高い声を出してみる。
『もう、リーゼロッテってば真面目なんだから!』
言ってみて、ひとりぷっと噴きだした。本当にアルフレート二世なら言いそうだ。
「それにしても腹話術って案外難しいのね」
ベッティを真似てみたものの、ちっともそれらしくならない。唇は動いてしまうし、リーゼロッテがしゃべっているのが丸わかりだ。
その日は腹話術の練習に明け暮れて、戻ったジークヴァルトにじぃっと見られていたことに気づくまで、リーゼロッテは縫いぐるみ相手にひたすら甲高い声を出し続けた。