嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
明日はフーゲンベルク家に再び移動する日だ。結局カイが訪れないまま、タウンハウスでひと月近くを過ごしてしまった。
もぐりこんだ寝所で、乱暴な寝返りを打つ。それでも上質な寝台は、キシキシと小さな音を立てただけだった。
(カイの嘘つき)
寝ても覚めてもカイのことばかりが心を占める。あの日の肌の感覚は、日々薄れてきてしまっている。どうしようもなくさみしくなって、ルチアは自身の体をぎゅっと抱きしめた。
「こんなことならあのままカイの家にいればよかった……」
そうすれば自分からカイを探しに行けるのに。夜半になって吹雪いて来たのか、強い風がガタガタと窓を揺らす。それが煩くて、ルチアは上掛けの毛布を頭からかぶった。
しばらくするとコツコツとガラスを叩くような音が加わった。聞こえ続けるその音に、次第にイライラが募っていく。
「なんなのよっ、もう!」
勢いよく身を起こし寝台を降りる。窓の立て付けを確認しようと、ルチアは分厚いカーテンに手を掛けた。
「――……っ!」
ルチアは声にならない悲鳴を上げた。水滴で曇るガラスの向こうに、ぼうっと人影が立っている。何しろここは二階の部屋だ。雪風が吹き荒れる夜も遅い時間に、人間がいられるような場所ではなかった。
カーテンを握る手が震え、恐怖で動けなくなる。しかしその人物は窓ガラスに顔を寄せ、しぃっと人差し指を口元にあててきた。
「カ……!」
再びしぃっとされ、慌てて口を手で覆った。急いで窓を開けると、刺すような冷たい風が勢いよく吹き込んでくる。窓枠をひょいと乗り越えたカイは、すとんと床に着地した。
「今度から窓の鍵は開けといてよ」
「カイ……どうしてこんなところから……」
驚きすぎてリアクションが薄くなる。音を立てないように窓を閉めてから、カイは手首をつかんでルチアを腕に抱き込んだ。
明日はフーゲンベルク家に再び移動する日だ。結局カイが訪れないまま、タウンハウスでひと月近くを過ごしてしまった。
もぐりこんだ寝所で、乱暴な寝返りを打つ。それでも上質な寝台は、キシキシと小さな音を立てただけだった。
(カイの嘘つき)
寝ても覚めてもカイのことばかりが心を占める。あの日の肌の感覚は、日々薄れてきてしまっている。どうしようもなくさみしくなって、ルチアは自身の体をぎゅっと抱きしめた。
「こんなことならあのままカイの家にいればよかった……」
そうすれば自分からカイを探しに行けるのに。夜半になって吹雪いて来たのか、強い風がガタガタと窓を揺らす。それが煩くて、ルチアは上掛けの毛布を頭からかぶった。
しばらくするとコツコツとガラスを叩くような音が加わった。聞こえ続けるその音に、次第にイライラが募っていく。
「なんなのよっ、もう!」
勢いよく身を起こし寝台を降りる。窓の立て付けを確認しようと、ルチアは分厚いカーテンに手を掛けた。
「――……っ!」
ルチアは声にならない悲鳴を上げた。水滴で曇るガラスの向こうに、ぼうっと人影が立っている。何しろここは二階の部屋だ。雪風が吹き荒れる夜も遅い時間に、人間がいられるような場所ではなかった。
カーテンを握る手が震え、恐怖で動けなくなる。しかしその人物は窓ガラスに顔を寄せ、しぃっと人差し指を口元にあててきた。
「カ……!」
再びしぃっとされ、慌てて口を手で覆った。急いで窓を開けると、刺すような冷たい風が勢いよく吹き込んでくる。窓枠をひょいと乗り越えたカイは、すとんと床に着地した。
「今度から窓の鍵は開けといてよ」
「カイ……どうしてこんなところから……」
驚きすぎてリアクションが薄くなる。音を立てないように窓を閉めてから、カイは手首をつかんでルチアを腕に抱き込んだ。