嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「さすがに正面からは会いに来れないしさ。わ、ルチアの肌、(あつ)っ」
「ひゃっ、ちょっ冷たっ」

 いきなり夜着をまくられて、背中の素肌にカイの手が滑りこんだ。あまりの冷たさに、思わずカイを押し退()ける。

「大声出しちゃ駄目だってば」
「だって心臓止まっちゃうじゃない!」
「はは、ルチアがすぐ気づいてくれないからさ、オレ凍え死ぬとこだったよ?」
「そんなこと言われたって……」

 小声での応酬が続く中、再び腕に抱き寄せられた。()てついたカイの指先が、性懲(しょうこ)りもなく背中の上を這っていく。

「や、だからそれ冷たいんだってば! 触るなら、せめておしりにして!」

 リクエスト通りにカイの手が移動した。冷たいことに変わりはないが、背中ほど我慢できないこともない。

「はールチアあったけー」

 ぎゅっと腕に囲われて、カイの匂いに包まれた。こみ上げてくるうれしさに、つい口元が緩んでしまう。それを悟られるのも悔しくて、ルチアは裏腹に唇を尖らせた。

「どうしてもっと早く来てくれなかったの? わたしずっと待ってたのに」
「ごめんごめん、オレもそれなりに忙しくてさ」

 ルチアの熱で(だん)が取れたのか、先ほどよりもカイの手に冷たさを感じなくなってきた。

「ねぇ、ルチア。あっちでもっとあっためてよ」

 耳元で囁かれ、頬を(しゅ)に染め頷いた。くっついたままふたりで寝台に上がり、ヘッドボードに背を預けたカイは、ルチアの肩を抱き寄せ足の間に座らせた。
 カイの胸にもたれ掛かり、琥珀の瞳をじっと見上げる。頬に触れた指先が、耳を越えうなじの方へと滑り込んできた。

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