嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 賭けのチップ代わりにレルナー家からティール家へと養子に入ったカミラは、女児が欲しかったティール公爵夫人にそれはそれは可愛がられていたらしい。ピンクを好むティール夫人に、ことあるごとに派手に着飾らされ、カミラは令嬢時代いつでもピンク色のドレスを身にまとっていた。おかげでついたふたつ名が、ティール公爵家の桃色姫という訳だ。

 カミラが出席する夜会では、ティール家に気を遣って桃色のドレスを選ぶ者は誰ひとりとしておらず、もはやピンクの装いはカミラの専売特許となっていた。

 しかしグレーデン侯爵家へ嫁ぎ、反動のようにカミラは落ち着いた色のドレスしか着なくなった。ティール夫人による着せ替え人形ごっこが、よほど嫌だったことが伺える。

「親が子に干渉するなど、本当に馬鹿げているわ。そういった意味ではお前はしあわせね。忌み児として生まれて(かえ)ってよかったのではなくて?」
「まったくカミラ様のおっしゃる通りです」

 カイが受けた託宣について、カミラがどこまで知っているのかは分からない。だが今の自由な立場は、確かにそう悪いものではなかった。そんなふうに思って、カミラの軽口をカイは適当に笑顔でやり過ごした。

 曲が終わり、カミラをエルヴィンの元へと送り届けると、再びカイはレルナー公爵夫人へと注意を向けた。いまだ挨拶の人だかりに囲まれる夫人をみやり、彼女をダンスへと連れ出すのは至難の(わざ)に思えてくる。

(タイミング的に彼女がレルナー公爵と踊った後か……)

 主催者として、一曲くらいはふたりでダンスフロアに立つだろう。その機会を待つしかなさそうだ。

 ふいにフロアの入り口付近が騒がしくなった。ジークヴァルトとリーゼロッテを取り巻くように、多くの貴族が集まってきている。貴族たちは紳士淑女に分かれ、勢いのまま半ば無理やりふたりを引きはがした。

 ご夫人たちに囲まれて、リーゼロッテは休憩用の椅子が置かれた一角へと連れていかれた。戸惑い顔のままその中心に座らされる。
 これは新婚となった者の通過儀礼のようなものだ。根掘り葉掘り、既婚者たちから質問攻めの洗礼を受けるのが、社交界での習わしとなっていた。

 その淑女たちの輪の中に、ターゲットのレルナー公爵夫人が加わるのが見えた。これはまだしばらく時間がかかりそうだ。

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