嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
ダンスフロアを出ると、いきなり大勢の貴族たちに囲まれた。誰だか分からないご夫人に手を引かれ、あれよあれよという間に壁際の一角に連れていかれてしまう。
助けを求めジークヴァルトの姿を探すが、遠い場所で紳士たちの人だかりの真ん中にいた。紳士淑女に綺麗に別れた状況に、新婚貴族が受ける洗礼なのだと知る。新たな既婚者を迎えるべく行われるこれは、社交界で古くからの習わしであるとエマニュエルから事前に教わっていた。
彼女の話では、新婚夫婦はそれぞれ紳士・淑女に分かれて質問攻めに合うとのことだ。赤裸々な会話にも動揺しすぎないよう、リーゼロッテは注意を受けている。
リーゼロッテを中心に、大方の夫人が席に着いた。椅子にあぶれて立ったままでいる夫人は、爵位の低い者なのだろう。
思わず知り合いを探すも、エマニュエルや母クリスタの姿はない。最後まで空けられていた横の席には、レルナー夫人が収まった。反対側にはカミラが陣取って、リーゼロッテは逃げようのない場に覚悟を決めた。
(いよいよ貴婦人の会へ仲間入りね。公爵夫人として言動には気をつけなくちゃ)
今日はまずリーゼロッテのお披露目だ。多少のやらかしは大目に見てもらえる。この夜会で政敵は多くないはずなので、うまく立ち回ることは考えなくていい。周りが助け舟を出してくれるからと、エマニュエルの勉強会でリーゼロッテはそう教えられていた。
それでもジークヴァルトの恥になるような振る舞いは、できれば避けて通りたい。不安をなんとか押し殺し、渾身の淑女の笑みを顔に乗せた。
「さぁみなさん、今宵はフーゲンベルク公爵夫人を初に迎えてよ。たのしくおしゃべりいたしましょう?」
レルナー公爵夫人のひと声で、場が一気に盛り上がる。これまでも夜会には滅多に顔を出さないでいたリーゼロッテだ。どの夫人も品定めするように、好奇の目を向けていた。
「レルナー公爵夫人様、今宵は素敵な夜会にお招きいただきましてありがとうございます」
「そう改まらないで。リーゼロッテ様のご実家へ、我が義娘ツェツィーリアが嫁ぐことが決まりましたもの。もう身内も同然でしょう? どうぞわたくしのことはゾフィーとお呼びになって」
「光栄ですわ、ゾフィー様。ルカとツェツィーリア様の婚約を、わたくしもとてもうれしく思っております」
夜会の主催者が味方となれば、今日のところは怖いものなしだ。安堵からふわりと笑ったリーゼロッテに、周囲から感嘆の声があふれ出た。
ダンスフロアを出ると、いきなり大勢の貴族たちに囲まれた。誰だか分からないご夫人に手を引かれ、あれよあれよという間に壁際の一角に連れていかれてしまう。
助けを求めジークヴァルトの姿を探すが、遠い場所で紳士たちの人だかりの真ん中にいた。紳士淑女に綺麗に別れた状況に、新婚貴族が受ける洗礼なのだと知る。新たな既婚者を迎えるべく行われるこれは、社交界で古くからの習わしであるとエマニュエルから事前に教わっていた。
彼女の話では、新婚夫婦はそれぞれ紳士・淑女に分かれて質問攻めに合うとのことだ。赤裸々な会話にも動揺しすぎないよう、リーゼロッテは注意を受けている。
リーゼロッテを中心に、大方の夫人が席に着いた。椅子にあぶれて立ったままでいる夫人は、爵位の低い者なのだろう。
思わず知り合いを探すも、エマニュエルや母クリスタの姿はない。最後まで空けられていた横の席には、レルナー夫人が収まった。反対側にはカミラが陣取って、リーゼロッテは逃げようのない場に覚悟を決めた。
(いよいよ貴婦人の会へ仲間入りね。公爵夫人として言動には気をつけなくちゃ)
今日はまずリーゼロッテのお披露目だ。多少のやらかしは大目に見てもらえる。この夜会で政敵は多くないはずなので、うまく立ち回ることは考えなくていい。周りが助け舟を出してくれるからと、エマニュエルの勉強会でリーゼロッテはそう教えられていた。
それでもジークヴァルトの恥になるような振る舞いは、できれば避けて通りたい。不安をなんとか押し殺し、渾身の淑女の笑みを顔に乗せた。
「さぁみなさん、今宵はフーゲンベルク公爵夫人を初に迎えてよ。たのしくおしゃべりいたしましょう?」
レルナー公爵夫人のひと声で、場が一気に盛り上がる。これまでも夜会には滅多に顔を出さないでいたリーゼロッテだ。どの夫人も品定めするように、好奇の目を向けていた。
「レルナー公爵夫人様、今宵は素敵な夜会にお招きいただきましてありがとうございます」
「そう改まらないで。リーゼロッテ様のご実家へ、我が義娘ツェツィーリアが嫁ぐことが決まりましたもの。もう身内も同然でしょう? どうぞわたくしのことはゾフィーとお呼びになって」
「光栄ですわ、ゾフィー様。ルカとツェツィーリア様の婚約を、わたくしもとてもうれしく思っております」
夜会の主催者が味方となれば、今日のところは怖いものなしだ。安堵からふわりと笑ったリーゼロッテに、周囲から感嘆の声があふれ出た。