嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「リーゼロッテ様は誠に可憐(かれん)でいらっしゃること」
「フーゲンベルク公爵様が、ご自分のものと見せつけたくなるお気持ちがよく分かりますわね」
「青い(いかずち)と呼ばれる公爵様をああも骨抜きになさるなんて、さすがはリーゼロッテ様ですわ」

 口々にはやし立てられ、小首をかしげて微笑み返す。立場的に持ち上げられているだけだ。それは分かっているはずなのに、あながち嘘でないところが羞恥を誘う。

(淑女たるもの動揺を顔に出しては駄目よ! ロッテンマイヤーさんにもいつも言われていたじゃない)

 気を引き締め、笑みをキープする。社交経験の浅い自分は、とりあえずエマニュエルの言葉に従うしかない。彼女はいざという時の秘策を授けてくれた。返答に困った際は、とにかく笑顔で切り抜けろ。なんてことはない。ただそれだけのことだった。

(アデライーデ様にも以前言われたっけ……慌てて余計なことを口走らないのが大事ってことね)

 たわいもない会話から始まって、あちこちから質問が飛んでくる。笑顔で受け答えしていきながら、これなら乗り切れそうと気が緩んだ。

「それでどうなのですか? フーゲンベルク公爵様とお過ごしになる毎日は。わたくしたち、公爵様との日常など想像もつかなくて」
「何も特別なことはございませんわ。日々穏やかに過ごしております」
「リーゼロッテ様は婚姻前から、もう長いことフーゲンベルク家でお過ごしになられていましたものね。療養を兼ねてとお伺いしたのですけれど」
「ええ、わたくし、少しばかり体が弱いところがありまして……でも今ではほとんど問題ないくらいに回復しておりますわ」
「それを聞いてわたくしたちも安心しましたわ。公爵様はハインリヒ王の護衛騎士をこなすようなお方ですもの。そのようにご立派な公爵様を毎夜お相手になさるのは、なかなか大変なことでしょう?」

 率先しておしゃべりを続けるご夫人が、意味ありげに含み笑いをする。つられるように周りの夫人も、一斉に上品な笑い声を立てた。

 リーゼロッテは口ごもって、思わず頬を朱に染めた。動揺してはいけないと思っても、どう言い返したらいいのかが分からない。笑顔を保つことができなくて、俯きながら熱い頬を両手で覆った。

「まぁ、なんてお可愛らしい」
「ほんと、初々(ういうい)しくていらっしゃいますわ」
「こんな反応をされては、公爵様もたまりませんわね」

 あちこちからくすくすと笑われて、増々顔に熱が集まっていく。そこをまた笑われてしまって、もうどうにも収集がつかなくなった。

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