嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
◇
起こさないようにと、慎重に抱き上げる。よほど疲れたのか、部屋に戻ってもリーゼロッテは深く寝入ったままだ。
寝台に横たえると、スカートのドレープがはみ出すように広がった。夜会のドレスは細い腰がさらに締めつけられている。それがどうにも痛々しく感じてしまう。
「旦那様、あとはわたしたちにお任せを」
「いい、オレがやる。お前たちはもう下がれ」
「ですが……」
ロミルダとエラが顔を見合わせ、困った顔をした。
「……分かりました。御用がございましたらすぐにお呼びください」
「ああ、何もなければ、昼まで顔を出さなくていい」
ふたりが出ていくと、部屋に静寂が降りる。リーゼロッテが息苦しそうに身じろいだ。そっと体を起こし、飾りのリボンの下に隠されていた釦を順に外していく。
背中側、肩口の白い肌の上に、行きの馬車でつけた所有のしるしが刻まれている。見えそうで見えない絶妙な位置だ。だがそれは見えなそうでいて、真上から見下ろすと覗きこむことのできる、そんな位置でもあった。
リーゼロッテと踊ったあの男も、この跡を見ただろうか。軽率な自分の行為にジークヴァルトは苛立った。
新婚貴族を捕まえてなされる無遠慮な会話は、くだらないほど低俗で明け透けだ。男だけの集まりなら尚のこと、彼女との秘め事を想像させる言葉に、抑えようのない殺意が湧き上がった。
その頭の中で、リーゼロッテが服を脱がされにかかっているのかと思うと、目の前の男どもを全員、呪い殺してしまいたかった。彼女を知る者は自分だけでいい。この世のすべての人間の記憶から、彼女の存在を消し去ってしまえたら。そんな馬鹿げたことを本気で願った。
重いドレスを脱がし、遠くに放り投げる。きつく絞めあげられたコルセットの紐を緩めると、リーゼロッテは大きく息を吸いこんだ。胸郭が最大限広がって、次いでゆっくりと息を吐く。
「ん、エラ……? ごめんなさい、わたくし寝てしまっていて……」
寝ぼけ眼のまま、リーゼロッテがこの顔を見た。不思議そうに小首を傾ける。
「じーく……ヴぁるとさま?」
たまらなくなって口づけた。リーゼロッテの瞳に映るのは、自分ひとりだけでいい。このまま永遠に閉じ込めてしまいたい。もう二度と、誰の手にも触れさせないように。
起こさないようにと、慎重に抱き上げる。よほど疲れたのか、部屋に戻ってもリーゼロッテは深く寝入ったままだ。
寝台に横たえると、スカートのドレープがはみ出すように広がった。夜会のドレスは細い腰がさらに締めつけられている。それがどうにも痛々しく感じてしまう。
「旦那様、あとはわたしたちにお任せを」
「いい、オレがやる。お前たちはもう下がれ」
「ですが……」
ロミルダとエラが顔を見合わせ、困った顔をした。
「……分かりました。御用がございましたらすぐにお呼びください」
「ああ、何もなければ、昼まで顔を出さなくていい」
ふたりが出ていくと、部屋に静寂が降りる。リーゼロッテが息苦しそうに身じろいだ。そっと体を起こし、飾りのリボンの下に隠されていた釦を順に外していく。
背中側、肩口の白い肌の上に、行きの馬車でつけた所有のしるしが刻まれている。見えそうで見えない絶妙な位置だ。だがそれは見えなそうでいて、真上から見下ろすと覗きこむことのできる、そんな位置でもあった。
リーゼロッテと踊ったあの男も、この跡を見ただろうか。軽率な自分の行為にジークヴァルトは苛立った。
新婚貴族を捕まえてなされる無遠慮な会話は、くだらないほど低俗で明け透けだ。男だけの集まりなら尚のこと、彼女との秘め事を想像させる言葉に、抑えようのない殺意が湧き上がった。
その頭の中で、リーゼロッテが服を脱がされにかかっているのかと思うと、目の前の男どもを全員、呪い殺してしまいたかった。彼女を知る者は自分だけでいい。この世のすべての人間の記憶から、彼女の存在を消し去ってしまえたら。そんな馬鹿げたことを本気で願った。
重いドレスを脱がし、遠くに放り投げる。きつく絞めあげられたコルセットの紐を緩めると、リーゼロッテは大きく息を吸いこんだ。胸郭が最大限広がって、次いでゆっくりと息を吐く。
「ん、エラ……? ごめんなさい、わたくし寝てしまっていて……」
寝ぼけ眼のまま、リーゼロッテがこの顔を見た。不思議そうに小首を傾ける。
「じーく……ヴぁるとさま?」
たまらなくなって口づけた。リーゼロッテの瞳に映るのは、自分ひとりだけでいい。このまま永遠に閉じ込めてしまいたい。もう二度と、誰の手にも触れさせないように。