嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
 公爵夫人となった今、子作りに励むのは当然の流れだ。ジークヴァルトと肌を合わせるのも嫌ではない。しかしねちっこく、体中を舐めまわすのだけはやめてほしい。焦らしに焦らされるのも勘弁だ。

「ただ……?」
「い、いえ、何でもないの」

 エラ相手でも、さすがにそこまで言うのは恥ずかしすぎる。赤くなった顔をごまかしながら、リーゼロッテはそそくさと身支度をはじめた。

 今日はリーゼロッテ主催で初めてのお茶会を開くことになっている。招待客は仲のいい令嬢たちだけなので、気負わなくてもいいのがうれしいところだ。女主人としての振る舞いの経験を積みつつ、次は社交の本番としてご夫人方を招待する予定になっていた。

「久しぶりの方ばかりだからたのしみだわ。でももう公爵夫人になったんだもの。(うわ)ついていては駄目ね」
「段取りはわたしがしっかりと取り仕切らせていただきます。何も心配なさらず、このエラにすべてお任せください」
「ありがとう、心強いわ。……ねぇ、でも、エラ。今日はあまり調子が良くないのではない……?」

 今朝のエラはどことなく顔色が悪い。いつもてきぱき動く彼女にしては、やたら手つきが緩慢(かんまん)だ。

「いいえ、そんなことは」
「もしかして悪阻(つわり)がひどいの? 駄目よ無理をしては」

 エラはそろそろ妊娠四か月だ。お腹のふくらみも少しずつ目立ってきている。

「それほどではありません。どうぞ奥様はお茶会に専念なさってください」
「でも……」
「必要なときはロミルダを頼ります。ですから」

 こういったときエラはなかなか引いてくれない。あとでロミルダに無理させないように頼もうと、リーゼロッテはとりあえずこの場は頷いた。

「分かったわ。無理のない範囲でお願いね」
「承知しました、リーゼロッテ奥様」

 気遣いの(かたまり)であるエラに、ついつい甘えてしまう。エラだけでなく誠心誠意仕えてくれる者たちに、これからは女主人としてきちんと目を配らなくては。
 決意も新たに、あわただしい一日が始まった。

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