嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
「マテアス……わたし、リーゼロッテ様のためにできる限りの事をしたいんです。でも無理はしないと約束します。わたしの意地のせいで今日の茶会を台無しにしては、公爵家の侍女長として失格ですから」
「その点は信頼していますよ。すべてエラの判断に任せます」
頷き返したマテアスは、エラを静かに抱きしめた。
「ああ、でもあなたが無茶をしやしないかと冷や冷やしている自分もいます。リーゼロッテ様のことになると、エラはすぐ限界を忘れてしまうので」
「マテアスだって人のこと言えないでしょう? もっとちゃんと自分を労わってほしいです」
「返す言葉がありませんね」
耳元で苦笑すると、マテアスはエラの頬に触れるだけの口づけを落とした。
「ではわたしは戻ります。何かあったら無理せずロミルダを頼ってください」
「忙しいのにありがとう……来てくれてうれしかった……」
立ち上がりかけたマテアスが再びエラを抱きしめてくる。今度は唇を啄むと、来た時と同様慌ただしく部屋を出て行った。
残されたエラはそっと腹に手を当てた。ここに命が育まれている。
(わたしの選んだ道は間違っていない)
マテアスに対する思いは穏やかだ。誰よりも頼れる存在であり、この胸を占めるのは尊敬と信頼だ。正直なところ一緒にいても、熱に浮かされた甘く痺れるような感情は湧いてこない。
それでもこれは愛だと思う。すこしずつ膨らんで膨らんで、この思いはいつしかエラの中で無視できないくらいに大きく広がっていた。
エーミールに感じる疼きは、もはや過去の感傷なのだとようやく気づく。彼を思って胸を焦がしたあの日々は、思い返すと今でも心が痛い。でも無理に忘れなくてもいい。時が経てばきっともっと、やさしく懐かしい痛みに変わっていくのだろう。
瞼を閉じて、ゆっくりと息を吐く。リーゼロッテに仕える者として、公爵家の侍女長として、そしてマテアスの妻として、これからも自分は生きていく。
そろそろ招待客が到着し始める頃合いだ。時刻を確認し、エラは気を引きしめ立ち上がった。
「その点は信頼していますよ。すべてエラの判断に任せます」
頷き返したマテアスは、エラを静かに抱きしめた。
「ああ、でもあなたが無茶をしやしないかと冷や冷やしている自分もいます。リーゼロッテ様のことになると、エラはすぐ限界を忘れてしまうので」
「マテアスだって人のこと言えないでしょう? もっとちゃんと自分を労わってほしいです」
「返す言葉がありませんね」
耳元で苦笑すると、マテアスはエラの頬に触れるだけの口づけを落とした。
「ではわたしは戻ります。何かあったら無理せずロミルダを頼ってください」
「忙しいのにありがとう……来てくれてうれしかった……」
立ち上がりかけたマテアスが再びエラを抱きしめてくる。今度は唇を啄むと、来た時と同様慌ただしく部屋を出て行った。
残されたエラはそっと腹に手を当てた。ここに命が育まれている。
(わたしの選んだ道は間違っていない)
マテアスに対する思いは穏やかだ。誰よりも頼れる存在であり、この胸を占めるのは尊敬と信頼だ。正直なところ一緒にいても、熱に浮かされた甘く痺れるような感情は湧いてこない。
それでもこれは愛だと思う。すこしずつ膨らんで膨らんで、この思いはいつしかエラの中で無視できないくらいに大きく広がっていた。
エーミールに感じる疼きは、もはや過去の感傷なのだとようやく気づく。彼を思って胸を焦がしたあの日々は、思い返すと今でも心が痛い。でも無理に忘れなくてもいい。時が経てばきっともっと、やさしく懐かしい痛みに変わっていくのだろう。
瞼を閉じて、ゆっくりと息を吐く。リーゼロッテに仕える者として、公爵家の侍女長として、そしてマテアスの妻として、これからも自分は生きていく。
そろそろ招待客が到着し始める頃合いだ。時刻を確認し、エラは気を引きしめ立ち上がった。