嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
(わたしの悩みなんて苦労のうちに入らないわね)
いつかアンネマリーのようになれるだろうか。ジークヴァルトの横に立つにふさわしい自分。甘やかされるだけでない、そんな誇れる姿を想像した。
「あ、動いたわ。リーゼも触ってみない? 最近では頻繁に中から蹴ってくるのよ」
言われるがままアンネマリーの前で膝をついた。興味津々でせり出したお腹に手を当てる。
「…………」
真剣に集中するも、手のひらには何の感触も得られない。しばらくそのまま息をつめていたら、アンネマリーが困惑顔で口を開いた。
「おかしいわね。リーゼロッテが手を当てたら途端におとなしくなってしまったわ」
「わたくし、何か変なものを出していたかしら!?」
浄化の力が胎児に悪いなどと聞いたことはないが、影響があるとしたらとんでもないことだ。力を流し込んだりはしていないが、何かあってはならないとリーゼロッテは慌てて手をひっこめた。
「あら? また蹴り出したわ。もう一度当ててみてちょうだい」
恐る恐る手を当てるも、やはり何も感じとることはできない。伺うように見上げると、アンネマリーは困ったような笑顔を返してきた。
「この子はどうも人見知りみたいね」
「嫌われてしまっていないといいけれど……」
「馬鹿ね。リーゼを嫌う人間なんていやしないわ」
アンネマリーの綺麗な指がリーゼロッテの頬に延ばされる。以前と変わらないやさしい従姉がそこにいて、リーゼロッテはなんだかうれしくなった。
「ねぇ、リーゼ。リーゼはクリスティーナ様の喪に服して式を挙げていないと聞いたわ」
「ええ、そうだけれど、わたくしたちの場合、異形が騒ぐといけないから……」
「そう……」
「いつかも伝えたけれど、婚姻の儀のアンネマリーは本当に美しかったわ。今思い出しても、わたくし胸がいっぱいになってしまって」
心からそう思って、リーゼロッテは満面の笑みを向けた。悲恋の果てに結ばれたふたりの婚儀は、それはそれは胸熱だった。もう二年近く前の話だというのに、昨日のことのように感動が蘇る。
自分もあんな素敵な式を挙げてみたい。そんなふうに思うものの、これまでの異形がらみの騒ぎを振り返ると、仕方のないことだと諦めていた。
いつかアンネマリーのようになれるだろうか。ジークヴァルトの横に立つにふさわしい自分。甘やかされるだけでない、そんな誇れる姿を想像した。
「あ、動いたわ。リーゼも触ってみない? 最近では頻繁に中から蹴ってくるのよ」
言われるがままアンネマリーの前で膝をついた。興味津々でせり出したお腹に手を当てる。
「…………」
真剣に集中するも、手のひらには何の感触も得られない。しばらくそのまま息をつめていたら、アンネマリーが困惑顔で口を開いた。
「おかしいわね。リーゼロッテが手を当てたら途端におとなしくなってしまったわ」
「わたくし、何か変なものを出していたかしら!?」
浄化の力が胎児に悪いなどと聞いたことはないが、影響があるとしたらとんでもないことだ。力を流し込んだりはしていないが、何かあってはならないとリーゼロッテは慌てて手をひっこめた。
「あら? また蹴り出したわ。もう一度当ててみてちょうだい」
恐る恐る手を当てるも、やはり何も感じとることはできない。伺うように見上げると、アンネマリーは困ったような笑顔を返してきた。
「この子はどうも人見知りみたいね」
「嫌われてしまっていないといいけれど……」
「馬鹿ね。リーゼを嫌う人間なんていやしないわ」
アンネマリーの綺麗な指がリーゼロッテの頬に延ばされる。以前と変わらないやさしい従姉がそこにいて、リーゼロッテはなんだかうれしくなった。
「ねぇ、リーゼ。リーゼはクリスティーナ様の喪に服して式を挙げていないと聞いたわ」
「ええ、そうだけれど、わたくしたちの場合、異形が騒ぐといけないから……」
「そう……」
「いつかも伝えたけれど、婚姻の儀のアンネマリーは本当に美しかったわ。今思い出しても、わたくし胸がいっぱいになってしまって」
心からそう思って、リーゼロッテは満面の笑みを向けた。悲恋の果てに結ばれたふたりの婚儀は、それはそれは胸熱だった。もう二年近く前の話だというのに、昨日のことのように感動が蘇る。
自分もあんな素敵な式を挙げてみたい。そんなふうに思うものの、これまでの異形がらみの騒ぎを振り返ると、仕方のないことだと諦めていた。