嘘つきな騎士と破られた託宣 -龍の託宣6-
     ◇
「お綺麗です、リーゼロッテ様」
「ありがとう、エラ」

 控えの部屋で姿見に映った自分の姿を見つめた。森の神事の衣装と違って、今日は思い描いていたようなウェディングドレスだ。

「本当にお綺麗です……」

 涙声のエラにつられて瞳が潤む。泣いては化粧が崩れてしまうと、リーゼロッテはなんとか涙を押しとどめた。

「エラも大事な時期なのに、長距離を移動させてごめんなさい」
「そのようにおっしゃらないでください。リーゼロッテ様の晴れの舞台に、このエラがおそばにいなくてどうすると言うのでしょう」

 メイク道具をフルで持参して、エラは完璧に化粧を施してくれた。長年リーゼロッテに仕えてきたエラだ。自分でも目を奪われてしまうほど、リーゼロッテは美しい花嫁姿となっていた。

「そろそろ準備はできたかしら?」

 ノックとともにクリスタがやってくる。その後ろにいたのはジークヴァルトの母ディートリンデだ。振り向いたリーゼロッテの姿に、ふたりは同時に感嘆のため息を漏らした。

「綺麗よ、リーゼロッテ……本当に立派になって……」
「クリスタお義母様……」

 涙ぐむクリスタを前に、リーゼロッテはまた泣きそうになってしまった。血のつながりはないとは言え、クリスタはリーゼロッテにとって本当の母親だ。

「ジークヴァルトにはもったいないくらいの花嫁ね。そのドレスもとても似合ってる。今のあなたをご覧になったら、マルグリット様もきっとおよろこびになると思うわ」
「ありがとうございます、ディートリンデ様」

 この身に纏う花嫁衣装は、フーゲンベルク公爵夫人となる者が代々大切に受け継いできたものだ。そのドレスに袖を通せたことを、リーゼロッテは誇らしく思った。

「リーゼロッテお姉様、素敵! とっても綺麗よ……!」

 ドレスをたくし上げて飛び込んできた未来の妹を、リーゼロッテは笑顔で迎え入れた。飛びつきそうになったところを、ツェツィーリアは寸でで踏みとどまった。

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