月明かりの下で、あなたに恋をした
第3話
11月最後の土曜日。私と葛城さんは、カフェ「ブルームーン」の窓際の席で向かい合っていた。テーブルには、スケッチブックとノートパソコン。
「まず、動物たちのキャラクター設定から始めましょう」
葛城さんがノートを開く。
「今は『動物たち』と一括りになっているので、それぞれに個性を持たせます。たとえば、リーダー格のキツネは慎重で優しい。ウサギは行動的で明るい。タヌキは臆病だけど心優しい、とか」
「なるほど」
私は想像を膨らませる。人間と同じように動物にも性格がある。
「そうすれば、子どもたちも『この子が好き』って選べますよね」
「確かに」
私はスケッチブックに、動物たちの性格メモを書き込んだ。
それから2時間、私たちは制作について話し合った。細かい表現の工夫。色彩の選び方。ページをめくる時のリズム。
葛城さんと一緒だと、創作がこんなにも楽しい。この時間が、ずっと続けばいいのに。
◇
12月に入ってからも、私たちは毎週土曜日、カフェで打ち合わせを重ねた。街はクリスマスの装飾で華やいでいた。
制作は順調に進んでいたのだが──。
12月中旬のある日。私が、ラストシーンの描き直しを持っていったときのこと。
「少女の心の変化を、丁寧に描いたつもりです」
葛城さんがページをめくる。しばらく沈黙が続いた。私は、ドキドキしながら待つ。
「……柊さん」
葛城さんが顔を上げた。その表情は、いつもより厳しい。
「これではダメです」
その言葉に、胸がざわついた。
「え?」


