素直になれない高飛車王女様は今更「愛されたい」だなんて言えるわけがない
 さっきまでそうされていたように、ジェラルドの手を掴む。ロジータの意図を図りかねて引きずられるままになっている彼を、居室に連れ込んだ。

「ひめ、さま……?」

 そのまま長身を寝台の上に押し倒す。きょとんとしたまま固まる彼の上に馬乗りになった。どう考えても淑女の行いではない。自覚はある。

「あなた、一生わたくしの下僕でいる覚悟はあるの?」

 それは裏返してみれば、ロジータが一生ジェラルドを使役する覚悟でもある。

「喜んで。その代わり一の下僕にしてくださいね」

 返答とともに瞳に光が戻る。まったく、揺らぎもしないきれいな目だ。

「わからないの」

 結局のところロジータがわからないのは自分のことだった。きらいかと問われたら違うとは思うが、好きかと問われた時になんと答えていいのかわからない。

「わたくしはわかっていないのでしょう? それならちゃんと、あなたがわからせて」

 けれど、ジェラルドはきっと違うのだ。彼の中では明確に答えが出ている。それが知りたかった。

「わかるまで、わたくしに教えて」

 ジェラルドは目を閉じて一度大きく息を吸った。まるで何かを吹っ切るようにそうしたかと思うと、彼はロジータの肩に手を伸ばしてきた。

「えっ」

 気が付いた時には、目の前に神妙なジェラルドの顔と見慣れた天井があった。顔の横に突かれた彼の手。態勢をひっくり返されたのだと頭が理解するのに時間がかかった。

「さすがの俺も途中でやめることはできませんけど、よろしいですか?」

 ジェラルドはいつもちゃんと整えている前髪をわしゃわしゃと崩したかと思うと、上着をさっと脱いだ。シャツ一枚になると、その体格の良さがよく分かる。

「いいの? きっとお兄様に怒られるわよ?」

 自分でけしかけておいて言うことではないと思うが、きっと兄は怒るだろう。どんな顔をしているかさえ、鮮明に浮かんでくるようだった。

「シルヴィオ殿下が怖くてあなたの夫が務まりますか」 

 揶揄うようにロジータの金髪を掬ってその指に巻きつける。片方だけ口角を上げた笑い方は、まるで知らない男のようだった。

「愛しています、ロジータ」

 窓から差し込む光はまだ十分に明るい。この燃えるように熱い目に、今から自分は一体、どんな風に映るのだろう。
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