過つは彼の性、許すは我の心 参
好きではなかった。
あんな場所に来るだけあって、喜影君の傍に居ると暴力沙汰になる事もよくあった。
楽しそうに他人を殴るわ蹴るわでドン引きする事もあったが、それでも変わってしまった円嘉とその悪い友達と居るよりは、まだ居心地が良かったのは確かだった。
「嫌いではなかったんですよね」
「っ…!」
そう、嫌いではなかった。
暴力沙汰さえ無ければ静かな人で、声を掛ければちゃんと会話もしてくれた。
彼なりに私を気遣ってくれたいのだって分かっていた。
いつからか歪な関係になって、心を伴わないままに身体を重ね続けたけれど、悪夢の様なあの異常な環境下で唯一小さく呼吸出来る場所だった彼。
どうすれば彼は死なずに済んだのか。
あの場所であのまま彼が戻って来るのを待つべきだった?
私が獅帥君達と関われなければ良かった?
ううん全部たらればだ。
泣いても惣倉君が困るだけ。
泣き止め自分。
「ごめんなさい…」
「っ」
瞳からポロポロと出て来て、惣倉君がそっと掬う。
私は必死に惣倉君のせいじゃないと伝えるが、惣倉君は軽く首を振った。
そして、
「先輩、俺は此処を去ります」
一度言葉を区切って、
「もう2度先輩の前には現れません」
ーーー私に別れを告げた。