悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 本社からほど近い、大人向けの落ち着いた居酒屋。そこが今日の会場。照明を落とした半個室のお座敷には、企画部と広報部からすでに十数名が集まっていた。

「きゃ~。もしかして私たちが最後でした?」

 みんなの視線を一身に集めた愛奈は、顔の前で「ごめんなさい」と両手を合わせる。

「そうだよ。愛奈ちゃん待ち」
「ほら、早く座って。乾杯しようよ」

 愛奈が登場しただけで場がパッと華やいで、みんなが彼女のもとに集まってくる。
 広報部所属の〝社長令嬢〟
 立場としては志桜と似たようなものだけど、自分と違って彼女は我が社のアイドルだ。

「志桜もこっち、こっち! 私の隣ね」

 みんなに引っ張られて長テーブルの真ん中に座った愛奈は、誰からも声のかからない志桜を気遣って手招きしてくれる。

(また愛奈にフォローしてもらっちゃった。情けない)

 自己嫌悪におちいりつつ、彼女の隣に座った。若手社員が中心のテーブルで、初期研修を終えて志桜と同じ企画部に配属されたばかりの新入社員の姿もあった。志桜が教育係を務める予定になっている結城蘭だ。

「おつかれさまです! 神室さん」

 向かいの席に座る彼女は、元気いっぱいの大きな声で志桜に深々と頭をさげる。

「おつかれさま、結城さん」
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