悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 笑顔と優しげな声。そう意識しすぎたせいか、志桜の表情はかえってこわばり、声もいつもと同様に低かった。

「神室さん、もしかして具合でも悪いんですか?」

(あぁ、新入社員に逆に気遣われてしまった……)

「別に。なんでもないわ」
「なら、よかったですけど」

 ミルクティーみたいな明るい髪色、派手めのメイク。そんなギャルっぽい外見の彼女は、中学校から大学時代までテニスひと筋だったというバリバリの体育会系でもあるそうだ。

(ギャル系も体育会系も、これまであまり関わったことないし……どんな話をしたらいいのやら……)

 志桜はさっそく人見知りを発揮してして黙り込んでしまう。そんな志桜を横目に、愛奈が優しく彼女に声をかけた。

「結城さん、今日が飲み会デビューだよね。緊張してる?」
「はい、ちょっと」
「だよね。じゃあ早くなじめるコツを教えてあげるね」

 真面目な子なのだろう。真剣な顔で蘭は愛奈の話に耳を傾ける。

「うちの会社、ちょっと古い体質だから上司や先輩には丁寧に接してね。そのほうが、絶対にかわいがってもらえるから」
「なるほど~。こう見えても体育会なんで上下関係は得意です!」

 蘭は自信満々にそう言ったあと、向かいの志桜がサラダを取り分けているのに気づき顔を青くする。
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