悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
楓は軽く頭を振り、立ちあがる。
それから、すっかり寝入ってしまって目覚めそうにない志桜をそっと抱きあげた。とりあえず部屋まで運ぶことにしたのだ。
眠る彼女からふわりと立ちのぼる甘い香りに心をかき乱される。
(本当に、彼女と再会してからの自分はどうかしている)
これまでの人生で経験のない感情に翻弄されるばかりだ。
* * *
楓を産んだ母はとても美しい女性だった。そして、その内面は少女のように幼かった。
彼女は決して極悪人ではなかったと思うし、野良猫を構う程度には楓をかわいがってくれた。だが、その関わり方はとても親子と呼べるものではなかった。
端的に言ってしまえば、彼女は育児より恋がしたかったのだろう。とびきり美しくて自由奔放な母が恋愛の相手に困るはずもなく、彼女の愛はいつも楓ではなく楓の知らない男に注がれていた。
母は唯一の武器である美貌を武器に夜の銀座で働いていたが、その気まぐれさからしょっちゅう店を鞍替えしていて、さほど稼ぎがいいとは思えなかった。
けれど、自分たちはかなりの高級マンションで暮らし、家にはいつも金があった。
『別にいらないって言ったんだけどね~。まぁ、あの人は大金持ちだから!』
それから、すっかり寝入ってしまって目覚めそうにない志桜をそっと抱きあげた。とりあえず部屋まで運ぶことにしたのだ。
眠る彼女からふわりと立ちのぼる甘い香りに心をかき乱される。
(本当に、彼女と再会してからの自分はどうかしている)
これまでの人生で経験のない感情に翻弄されるばかりだ。
* * *
楓を産んだ母はとても美しい女性だった。そして、その内面は少女のように幼かった。
彼女は決して極悪人ではなかったと思うし、野良猫を構う程度には楓をかわいがってくれた。だが、その関わり方はとても親子と呼べるものではなかった。
端的に言ってしまえば、彼女は育児より恋がしたかったのだろう。とびきり美しくて自由奔放な母が恋愛の相手に困るはずもなく、彼女の愛はいつも楓ではなく楓の知らない男に注がれていた。
母は唯一の武器である美貌を武器に夜の銀座で働いていたが、その気まぐれさからしょっちゅう店を鞍替えしていて、さほど稼ぎがいいとは思えなかった。
けれど、自分たちはかなりの高級マンションで暮らし、家にはいつも金があった。
『別にいらないって言ったんだけどね~。まぁ、あの人は大金持ちだから!』