悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
『昼はエメラルド、夜はルビー』という魅惑のキャッチコピーがつけられており、質のいい石ならかなりの高値がつく。

(クラリティも最上レベル、大きさは2カラット近くあるし……)

 志桜は頭がクラクラするのを感じた。KAMURO社員として、宝石の鑑定眼には自信がある。これは間違いなく、とんでもなく高価な品だ。
 さすがに秘書が独断でこの金額のものを選ぶとは思えないので、少なくとも今年の贈りものは楓本人が関わっているはず。

(突然こんなものを贈ってくるなんて、なにを考えているのかしら)

 そのとき、ネックレスの入っていた箱からハラリと小さな紙が落ちた。名刺サイズのそれは、メッセージカードと思われる。ふたつ折りにされたそれを開いて、志桜はまた目を丸くする。

「手書きなんて、初めて」

 メッセージカードは例年同封されているが、当たり障りないメッセージが印字されているだけのそっけないもの。一応は婚約者である彼の肉筆を志桜は初めて目にした。

(流麗で美しい字を書く人なのね)

 シンプルな白いカードにはこんなメッセージが記載されている。

【誕生日おめでとう。よい一年を。追伸、日本への帰国が決まった。このプレゼントが届く頃にはカリフォルニアを発っていると思う。 鷹井楓】
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