悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 文面から読み解けるとおり、彼は現在アメリカのカリフォルニア州にいる。シリコンバレーの中心都市として知られるサンノゼという街だ。
 五年前に志桜と婚約した直後に仕事の拠点をそちらに移して以来、ずっと向こうで暮らしている。もう日本に戻ってくる気はないのだろうと思っていたので、少なからず驚いた。

(あの人、帰ってくるのね)

 その一報が二十五歳の誕生日にもたらされたという事実が志桜の胸をざわつかせる。
 婚約当初、二十歳だった自分に彼が告げた言葉を思い出す。
『正式な結婚は……そうだな、君が大人になった五年後くらいにあらためて相談しよう』
 あれからちょうど五年の月日が流れた。彼はそれを認識しているのだろうか。
 そこまで考えて、志桜はクスリと苦笑を漏らした。

「バカみたい。あの人が覚えているはずないじゃない」

(それに、彼がなにを考えていたって私の気持ちは固まっているもの)

 近いうちにこちらから連絡をして、サンノゼまで会いに行こうと思っていたのだ。それが国内で済むなら、時間とお金が節約できてありがたい。
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