悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 楓はすべてわかってくれている、自分を信じてくれる。世界中が自分の味方になってくれたような安心感で志桜の涙腺がほろりと緩む。

「俺が欲しい言葉は、あのときに教えたはずだ」

 彼は志桜の涙を拭い、どこかいたずらっぽくほほ笑んでみせる。志桜もつられてクスリと笑い、言った。

「私を信じてくれて、ありがとうございます」

 部屋に彼を案内して、あらためて話をする。
 志桜が想像したとおり、やはり愛奈が楓のもとに出向いており、楓はそこですべてを知ったようだ。

「あんな写真を楓さんに見られてしまうとは……」

 偽物とはいえ、できれば見られたくなかった。

「ほかの二枚はともかく、ベッドの写真は志桜じゃないとすぐにわかったよ」
「え、どうして?」

 会社では、合成写真の可能性を疑ってくれたのは蘭だけだった。それだけ、うまく作成されていたのだろう。楓がさらりと答える。

「身体が志桜じゃない。右の鎖骨の下のホクロがあの写真にはなかったし」
「そ、そんなのよく覚えて……」

 たしかに自分は鎖骨の下にホクロがある。ほぼ上胸の辺り、服を着ていたら見えない場所だ。

「あの夜の記憶は、ものすごく鮮烈だったから。忘れることなどないな」

 からかうような眼差しを注がれ、恥ずかしさで志桜の頬は赤く染まる。
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