悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 楓を迎える前に試着したアレキサンドライト、そのままつけっぱなしにしていた。

「想像していた以上に、よく似合う」

 甘やかな眼差しを注がれ、胸がキュンと切なく疼いた。

(潔白はすぐに証明できる。私、楓さんのそばにいてもいいの?)

 その喜びがじわじわと胸に込みあげてくる。志桜は苦笑して、打ち明けた。

「もし無罪を証明できなければ、楓さんとはお別れするしかないと思っていました」
「バカだな。君がNOと言わないかぎりはそばにいる、そう約束しただろう」

 五年前とはすっかり別人の、とろけるような笑みを浮かべて、楓はギュッと志桜の手を握った。

「――なにがあっても、俺のほうからこの手を離すことはない」

 志桜はこくりとうなずき、それから彼を見あげる。

「聞いてもいいですか? どうしてアレキサンドライトを私に?」
「君が教えてくれただろう。一目で心をつかまれる宝石に出会ったら、と。きっと志桜に似合うと思った」

 楓は甘やかに目を細める。

「それにアレキサンドライトは志桜に似てる。次々に新しい顔を見せてくれて、そのどれもがとびきり魅力的で」
(それって、まるきり私にとっての楓さんだ)
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