悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 社内の人間にもあまり聞かれたくない話題になるからと、場所は都内ホテルの個室を備えたティーラウンジを楓が押さえてくれた。先に到着していたのは志桜と楓で、約束の時間ちょうどにやってきた英輔たちを出迎える。

「お呼び立てして申し訳ございません」
「いやぁ。お世話になっている鷹井家のご子息の頼みでしたらなんなりと!」

 これからどんな話をされるのかを知らない英輔は、あははと陽気に笑った。彼とは対照的に、愛奈は不安に青ざめた顔で、ずっと視線を下に向けている。

(こんなふうにおびえるくらいなら、最初からあんなマネしなければよかったのに)

 写真を合成して、人の名誉をおとしめる。それが犯罪行為だとも、理解していなかったのだろうか。
 彼女を見つめる志桜の心がスッと冷めていく。もう怒りもなにもなく、愛奈への思いは無になった。

「楓さんの事業の躍進ぶりはすごいものですね」
「恐れ入ります」
「AIでしたっけ? 最先端技術を極めるとは本当に素晴らしい!」

 放っておいたら永遠に続きそうな英輔のおべっかを遮って、楓は本題を切り出す。

「本日は萩田社長に大切なお話がありまして。実は、私の大切な婚約者にショッキングな出来事があったのです」

 楓はまずは志桜の不名誉な噂と合成写真の件から話し始めた。
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