悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
「大丈夫か、愛奈」

 英輔の隣の愛奈が手にしていたティーカップを落とし、割ったのだ。英輔は心配そうに娘の顔をのぞく。

「どうした、青い顔をして。もしかして具合でも悪いのか?」
「パパ。悪いけど、私は先に……」
「待って」

 逃げようと立ちあがった愛奈を、志桜が呼び止める。

「愛奈も、もう少しだけここにいて。そう時間は取らせないから」

 志桜の言葉に重ねて、楓がダメ押しをする。

「逃げるなら、問答無用で訴えさせてもらう」

 観念したのか、愛奈はそのままヘナヘナと椅子に座った。英輔は困惑しきった顔で愛奈と楓と志桜の顔を順に見る。

「ど、どういう意味でしょう?」
「一から説明します」

 そう前置きして、楓は愛奈を見据え、彼女のおかした罪について語り出す。

「まず、君は母親が倒れたという最低の嘘で志桜を悪い噂の多いバーにおびき出した。彼女が店に入る瞬間、ほかの客と交流している様子などの写真を撮らせた」

 ベッド写真以外は合成ではない、実際の志桜の写真だった。

「店に入るところの写真を撮ったのは君自身、金髪の男と話している場面は角度から考えてカウンターの内部にいるスタッフ。そうだろう?」
「……しょ、証拠はあるの?」
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