悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 大きな声で愛奈が叫ぶ。まだ強がる余裕はあるようだ。だが、余裕では楓も負けていない。

「もちろん。先に伝えておくと、君の悪事の証拠はすべて押さえてある。言い訳は時間の無駄でしかない」

 愛奈はグッと下唇を噛む。唇がワナワナと震えていた。

「あの店でしょっちゅう夜遊びをしていたのは志桜ではなく君だ。だからスタッフとも懇意で、わずかな謝礼金で写真撮影を依頼できた」

 あのとき、バーカウンターのなかにいた長髪の男性スタッフも雄大がSNSを駆使して探し当ててくれた。

『素直に白状しないと、君も名誉毀損罪の共犯者として訴えるかも。そう言ったら、あっさり喋ってくれましたよ』

 雄大はそう言って笑っていた。愛奈の依頼内容は〝できるだけ派手そうな男と志桜が親しげに見える写真を撮ること〟で、ゴウが選ばれたのは偶然だった。
 ゴウと彼女の大胆なベッド写真はゴウ本人のSNSから。ナンパ系動画クリエイターを名乗る彼なので、そういう素材はいくらでもあったようだ。
 それらの写真を使って、AIに合成画像を生成させる。近頃よく聞くディープフェイクというやつだ。合法的かつ手軽に使えるようなアプリもたくさん出回っており、愛奈もそれを利用したと思われる。
 黙って聞いていた英輔がここで抗議の声をあげた。
< 213 / 226 >

この作品をシェア

pagetop