悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
「会社のPCに証拠を残したままにしておくとは、ずいぶんと雑な仕事ぶりだ。君は〝細々したサポート〟が得意だったのでは?」

 かつての愛奈の台詞を引用した楓の嫌みに、愛奈はカッと顔を真っ赤にした。

「先ほどの言葉どおり訴えてやってもいいが……そうされたくなければ、二度と志桜に近づくな」

 その場の空気が、楓の怒りでビリッと震えた。愛奈はこくんと小さくうなずく。
楓はそんな彼女を一瞥したあと、今度はまだ事態をのみ込めていない様子の英輔に視線を向ける。

「百歩譲って彼女の罪には目をつむるとしても……萩田社長、あなたは決して許されない」

 ぎくりと英輔の全身が硬くなったのが見て取れた。顔中に狼狽の色が広がる。
 志桜も彼に向き直り、どうにか怒りを抑えた声で言う。

「どうか、すべてを正直に話してくれませんか?」

 だが、彼にはわずかな良心すら残ってはいないようだ。

「な、なんの話かさっぱりわからないな」

 楓がここまでに散々『すべて証拠を押さえてある』と忠告していたにもかかわらず、彼はまだシラを切る気のようだ。
 社交的で人当たりのいい彼の本性が、ずる賢いハイエナだとはきっと誰も思いもしなかっただろう。
 楓は失望のため息を落とし、ゆっくりと口を開いた。
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