悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
「仕事の都合で、しばらくカリフォルニアに滞在することになった」
「出張に行かれるのですか?」

 彼の口ぶりが軽かったので、短期的な話なのだと勝手に思い込んでしまった。彼の雰囲気にはカリフォルニアよりニューヨークのほうが似合いそうだな、などとお気楽に考えていたら「いや、そうではなく」と楓に否定されてしまった。

「もっと長期で。おそらく五、六年は向こうに」

 パチパチと志桜は目を瞬いた。それから頭に浮かんだ疑問をそのまま口に出す。

「で、では私も一緒に行くべきですよね」

 英語はさほど得意じゃないが大丈夫だろうか?とか、大学はどうしよう?とか、気になる点はいくつもあったが、志桜のなかでは〝夫婦になる〟と〝一緒に暮らす〟はイコールでそこは決定事項だと思っていた。
 ところが、楓は志桜の覚悟を冷たい声音で一笑にふした。

「その必要はない」
「え?」
「君はまだ学生だろう。勉強して、きちんと学校を卒業しなさい」

 彼は子どもに言い聞かせるような口ぶりでそう告げて、「ふぅ」と困りきったため息を落とす。それから、怖いくらいに静かな目が志桜を見おろす。

「両家のビジネスに必要だから婚約はしたが……」
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