悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 翌日。志桜は言われたとおりに、ベージュのシャツワンピースに白のジャケットという普段着スタイルで自宅の庭に立っていた。亡くなった母は花より緑が好きだったので、神室家の小さな庭にはいくつかの樹木が植えられている。
 十月に入り、すっかり秋めいてきたので、植物たちもこれから少しずつ赤く色づいていくだろう。

 約束の十一時ぴったりに、家の前の路地にアメリカメーカーの車が停まった。
 悪目立ちするほどではないが、一目で高級車とわかる佇まい。落ち着いたダークグリーンのボディカラーは、運転席から颯爽と出てきた彼によく似合っている。

「わざわざ迎えに来ていただいてすみません」
「別に」

 今日も安定の無表情ぶりだけれど、スーツ姿ではない楓を見るのは初めてなので、少し新鮮だった。Vネックの白いカットソーにブラウンのジャケット、同系色のパンツ。大人の男の休日スタイルといった雰囲気で素敵だけれどパーティーにはラフな印象だ。

「楓さんもパーティー前に着替えを?」
「あぁ。六本木にメイホリックの路面店があるから、そこで君と一緒に俺も着替えを済ませるつもりだ」
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