悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 優秀な人間は脳のリソースが有限だと知っているから、不要な思考や選択はできるかぎり排除する。というような説を聞いたことがある。彼はまさしく、そのタイプに見えた。

(このタイプに婚約破棄を決断させるには、破棄するメリットを冷静に説明すべき?)

 読めない男の攻略方法について頭を悩ませている間に、メイホリックの路面店に到着してしまった。
 広々とした店内には色とりどりのドレスが並んでいて、そのきらびやかさに志桜は怖気づいてしまいそうになる。

「鷹井さま、お待ちしておりました」
「あぁ。私自身と彼女のトータルコーディネートをお願いしたい」

 すでに店には連絡済みだったようで、女性スタッフふたりが慣れた様子で志桜をサロンのようになっている試着室に案内してくれた。

 メイホリックの最大の特徴はその優雅なフリル使いにある。ロマンティックだけれどキュートな印象に寄りすぎず、二十代から五十代まで幅広い世代の女性から支持されていた。
 明るいパステルカラーも特徴のひとつで、洗練されたエレガントなブランドというのがパブリックイメージだろう。

「お客さまは身長もあって均整の取れたスタイルですので、うちのドレスはどれもお似合いかと思います。新作のこちらなど、いかがでしょう? 今季のイチオシです」
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