悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 スタッフがあてがってくれたのは、ふんわりとしたライラック色の一着。ブランドアイコンのフリルがたっぷりとあしらわれた、甘めデザイン。清楚で可憐な女性が身にまとえば、きっとすごく素敵なのだろうけれど……。

(私じゃ絶対に無理!) 

 悪女顔の自分が着たら、せっかくドレスが台無しになってしまう。

「えっと、もう少し甘さ控えめの色やデザインだと嬉しいです」

 ワードローブが白、黒、べージュで占められている自分には、こういったパステルカラーはハードルが高すぎる。

「かしこまりました。では、もっと大人な印象のドレスをお持ちしますね」

 ふたりが真剣に選んでくれた結果、二着まで絞りこめた。モードな雰囲気の黒か、上品なブルーグレーか。よりメイホリックらしいのは後者だろうか。

「どちらもお似合いで選びきれませんね」

 ベテラン風のスタッフが言うと、もうひとりの若手の女性がポンと手を打つ。
「こういうときは男性の意見を取り入れては?」

(……男性?)

 志桜はピンとこなかったが、ベテランスタッフはすぐに察したようだ。

「いい案だわ。鷹井さまのほうはもう選び終わっている様子だし、お声をかけてきますね」
「えっ、いや」
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