悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
(え、褒められたの? いや、お店のスタッフの前だし、社交辞令よね)

「とはいえ、俺の意見など気にしなくていい。君の好きにしろ」

 志桜が想像したとおりの台詞を告げ、彼はもう興味を失ったかのように視線をそらした。

 それでも、自分のドレス選びに彼が意見してくれたこと……少しだけ嬉しかった。
 結局、ドレスは黒を選んだ。志桜自身もこちらが好きだったし、同行者である楓も黒だと言ったのだから迷う必要はないだろう。
 レセプションパーティーという明るいイベントに全身黒は地味すぎるので、アクセントカラーにサンダルとハンドバッグはシャンパンゴールドを選んだ。この色はメイホリックのブランドロゴにも使われているカラーだ。

 楓の装いは、パーティーらしい光沢感のあるブラックのスリーピース。タイは秋らしい深みのあるブラウンだ。

(綺麗な顔立ちは黒に映える……そっくりそのままお返ししたほうがよさそう)

 自分なんかより、彼のほうがずっとその言葉を体現している。フォーマルなスタイルはその完璧な美貌をより際立たせ、近寄りがたいほどのオーラを放っていた。

「黒がお好きなんですか?」
「え?」
「五年前に初めて会ったときも、黒いスーツを着ていらしたので」
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