悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
 帰宅後すぐに、志桜は勇気を出して彼に電話をかけた。
 彼の真意を確かめるため「話がしたい」と頼んだのだが、返事は『しばらくは難しい』というものだった。

『悪いが、仕事の都合で急遽サンノゼに出向かなきゃいけなくなってね』

 かつて暮らしていた街に、また二週間ほど滞在する予定になったのだと、楓が理由を説明してくれる。明日の夜には日本を発つらしい。
 気勢をそがれはしたけれど、仕事ならば仕方ない。

「では帰ってきてから、また」

 そう答えた志桜に、彼は意外な提案をしてきた。

『ちょうどいい。君も一度、こちらに来てみないか?』

 シリコンバレーの主要都市であるサンノゼは日本の何倍もAI活用が進んでいて、志桜がKマシェリで目指しているサービスと似た事例に実際に触れることもできる。今進めている企画に必ずプラスになると彼は語った。

『俺や園村の話はどうしても専門的になりがちで、イメージが湧きにくいだろう? そこを補うには実際に見てみるのが一番いい』

 ワクワクする魅力的な話ではあった。楓の言うとおり、自分の思い描くサービスが現実でどのように運用されているのか、この目で確かめる意義は大きいだろう。
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