悪女な私とは婚約破棄してください。なのに、冷徹社長の猛愛からは逃げられない
「オープンカーに乗ったのは初めてです」
「……考えてみたら、俺も初めて開けたかもしれない」

 その言葉に志桜は思わずクスリとしてしまった。

(文句なしのイケメンだけど、オープンカーはあまりイメージじゃないものね)

 志桜の思考を見透かしたように、彼が皮肉げに唇の端をあげる。

「似合わない、と言いたいんだろう?」
「いえ、そこまでは」

 ちっともフォローになっていないと途中で気づいて志桜は慌てる。それを見た彼がふっと目尻をさげた。

(この前も思ったけど。ほんの少し表情を緩ませただけで優しそうに見えるの……ちょっとずるいな)

 笑った顔すら意地悪そうと言われてしまう自分とは大違いだ。

「気を使う必要はない。西海岸自体が似合わないとよく言われるから」

 どこか拗ねた顔でぼやく彼に、志桜はこらえきれず噴き出してしまう。

「ふふ。たしかに楓さんには東側の都市のほうが似合いますね。ニューヨークやワシントンみたいな」

 パリッとしたスーツに身を包み、コーヒー片手にマンハッタンの高層ビル群を歩いていたらさぞかし絵になるだろう。

「俺も東の都市のほうが好きだが、ITならやはり西海岸だからな」

 楓は西海岸のビジネスの現状などを軽くレクチャーしながら車を走らせた。
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