白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
 どこまでも臭く危険な仕事だっていうのに。
 お給金だって、本当に少ない。

 荷物出しより、銅貨が数枚多いだけ。
 帰りに広場で売ってる屋台で串焼き買ったら、それだけで消えてしまうし。

「はぁ。水浴びしたい……」

 一度ここに潜ると、数日間は匂いが取れない気がする。
 私はフードの中にしまい込んだ髪に触れた。

 汚れているようには見えないし、今匂いを嗅いだって鼻がおかしくなってるから分からないか。

「こんなとこで考えていても仕方ない。とっとと帰ろう」

 そうため息一つ。
 私は慣れた道のりを歩き出した。

 しばらく進むと、金属のこすれるような甲高い音が薄暗い通路の奥から響く。
 灯りはない。
 そんなものを持てば、すぐにネズミが集まってしまうからだ。

 私たちは暗がりで目を慣らしてから、ただ小さく光るコケだけを持たされる。
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