白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
 私は思わず、下を見る。
 数分ももたずに、大きな個体のねずみが器用にはしごを登り始めていた。

「ああ……」

 気が緩んだわけでも、怯んだわけでもない。
 だけど焦れば焦るほど、上手く縄はしごは登れない。

 あと一段。
 振り向かなければいいと分かっていても、私は下を見てしまった。
 その瞬間、すぐ真下にいたねずみと視線が合う。

 ねずみは鋭いその爪で、私の足を掴んだ。

 どう形容していいものだろうか。
 痛いというよりも、熱いという感覚が足を駆け抜ける。
 
 熱せられた鉄板にでも足を打ち付けたようなその痛みに、短い悲鳴を私は上げた。

 そして無理やり足を上げれば、その痛みはさらに増す。
 上がれない、もう、上がれないよ。

 泣き出しそうになりながらも、次の縄を掴む。
 すると私の頭の上を、光る何かが落ちて行った。

「ぎゃん」

 短いねずみの悲鳴。
 振り返れば。ねずみのちょうど眉間らへんに長剣が刺さっている。

 剣? どうして……。

「今だ、早く!」

 おそらくこの子の持っていた剣だ。
 剣が刺さり絶命したねずみを巻き込み、その下にいたねずみたちが落ちていく音がする。

「でも剣が」
「そんなのいいから、早く」

 私はそれ以上振り返ることはせず、上から伸ばされるこの子の手を掴んだ。 
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