白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
「大丈夫?」

 そう言いながら、助けたその子が私をのぞき込む。
 きっとずっとしゃべらなかったから、焦らせてしまったようだ。

 改めて、その子の顔をゆっくりと私は見つめた。

 フードをかぶっていたから気づかなかったけど、黒い髪に赤い瞳の男の子。
 目鼻立ちもくっきりしていて、歳は私よりもいくつか上みたい。

 着ているものも、うちの使用人たちのような簡素な布の服ではない。
 しっかりと刺繍が施された生地もそうだけど、つるつるとしたその生地は一般市民が買えるようなものではないわね。

「たぶん、問題はないかと」
「たぶんって、すごく血が出ているじゃないか」
「やめて。見ないようにしているんだから」

 そう、恐ろしいほどの痛みはある。 
 立ち上がれるかと言われれば、立ち上がれないし、歩けもしない。

 だけど傷口を見てしまえば、もっと痛みが増すことなんて分かっている。
 だからあえて考えないようにしていたのに。

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