白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
「……どうぞ」

 私は若干体に力を入れながら、ベッドの縁から立ち上がる。
 そして何があってもいいように身構えて。

「遅くにごめんなさいね、奥様?」
「あなたは……」

 部屋の前に立っていたのは、薄いドレスを身に纏った夫の愛人だった。

 赤く形の良い唇に、やや赤みがかったピンクの大きな瞳。
 真っ直ぐに手入れされたバイオレットの髪が、キラキラと輝いている。

 豊満な胸と、くびれた腰。
 同性の私から見ても、彼女が美しいのは分かる。

「確か、アンヌ様でよろしかったですか?」
「それはあの方が呼ぶ名よ。アタシはマリアンヌ。これでもモルタ子爵家(ししゃくけ)令嬢なのよ」
「子爵家令嬢……。それは失礼いたしました」

 私がさも当たり前のように頭を下げると、マリアンヌは心底嫌そうな表情を向けた。

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