白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
「どうして……」
「え?」

「マリアンヌ様はそのようなコトなどしなくても、妻の座は確約されたようなモノではないですか。なのにどうして私にこんな話をされるのですか?」
「確約なんてどこにもないじゃない! だってそうでしょう?」

 マリアンヌはやや肩を震わせ、今にも泣き出しそうな様子だった。
 先ほどまでの勝ち気な表情はどこにもない。
 あるのはただ漠然とした不安に思えた。

「三年後に、アタシが彼の隣にいられるかなんてわからないじゃない。今だってそうよ。彼はお金を手にした途端、昔のようにまた女遊びをし始めたわ」

 髪を振り乱し、マリアンヌはその顔を両手で覆う。

 ああ、そうか。
 だからさっき、私が父に似てると言って彼女は怒ったのね。

「マリアンヌ様はそれほどまでに、あの人のことを……」
「愛してるのよ。悪い? さぞ、みっともなく思ったことでしょう。そうよ。どうしようもないくらい、アタシはあの人を愛してるの。あの人じゃなきゃ、ダメなのよ! みじめでもみっともなくても、あの人の愛だけがアタシは欲しいのよ」

 それは可哀想になるくらい、悲痛な叫びだった。

 こんなにも愛しているのに、ダミアンはお金のために私を選んだ。
 マリアンヌにとって、それがどれほどの屈辱的なことだったのか私には推し量ることなど出来ない。

 こんな風に、苦しくなるほど誰かを愛したことなどないから。

「貴女に動きがあったって信頼できる者から教えられたわ。だから思ったの。貴女はこの家もダミアンも好きではないんだろうって」
「まぁ、それはそうですね」
「だから好機《こうき》だと思ったわ。アタシから動けば、貴女も引き込めるんじゃないかって」

 そっか。そういうことだったのね。

 彼女の方からこちらに話を持ちかけてくるなんて、前回ではありえなかった。
 むしろ接点すらまるでなかったし。

 だけど今回は私から動いたから、マリアンヌは私のやろうとしていることをなんとなくでも知ったということ。
 
< 82 / 236 >

この作品をシェア

pagetop