白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
「ずいぶんな登場ね、役者さん」
「なーんだ。知ってたの?」

 男は悪びれもなく軽い口調で、あっさり自分の正体を認めた。
 しかし彼はナイフを下ろそうとはしない。

「ええ、だいたいわね」

 この前の父からの手紙に書かれていたから。

 私は追いつけなかった役者が貧民街へ馬車を走らせていたのがどうにも気になり、父に情報を求めたのだ。

 基本的に父は自分にかかわること以外は、お金が絡まない限り何も協力的ではない。
 だからこちらからの手紙に、この男爵家の金をだまし取っている役者がいると付け加えた。

 父にとってこの家はもはや自分のものだと疑ってもいない。
 だからこの家のお金は全て、自分のものだと思っている。

 そこに付けこんだのだ。

「怖くないの? 今、君が置かれた状況分かってる~?」
「ええ」

 まったく怖くないかと言われれば嘘になる。
 だけどどうせ一度死んだ身だ。

 それに父から彼の正体を聞いた瞬間から、こうなることは少なからず予想はしていた。

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