白い結婚にさよならを。死に戻った私はすべてを手に入れる。
「座らないの?」
「……」

 そう促すと、軽く舌打ちしたあと彼は席についた。
 そして顔を覆っていた布を取る。

 若草色の髪に深い緑の瞳。
 歳は私より少し若いくらいかしら。
 パッと見はどこまでも幼いようにも見えるし、その顔は愛くるしい。

 マダムたちが夢中になるのも分かるわ。
 男の子にしたら、かわいいもの。
 まぁ、持ってる武器も所属先もなんにも可愛くないんだけど。

「怖いね、ダントレットの人間は」
「そう? 怖いのは父だけだと思うけど」

 どこにでも通じている父は、闇ギルドにおいても一目おかれている。
 人づてに聞いた話では、闇ギルトの長と父は義兄弟だという噂もある。

「いや、あんたも十分さ。いつ殺意がないことに気付いた?」
「そうね……。だって殺すならつもりなら、わざわざ自分の姿なんか見せずに殺していたでしょう?」
「あははは、確かに。いや、十分あんたも怖いよ」

 豪快に笑う姿は、あの甘い声で囁いていた役者とはまったく別物のように思える。

「私はアンリエッタ。あなたは?」
「……」

 名前を聞いた途端、また表情が固くなる。
 ああ、闇ギルドの人って名前とか教えちゃダメだったのかしら。

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