破滅エンドしかないモブの娘に転生してしまったけど、父があまりにも優男だったので案外悪くはない。
 今なら逃げれるよね。
 ちょっと体は小さいけれど、中身は大人だし。

 どっかで聞いた台詞だけど、まぁ、実際中身16歳くらいだからね。
 破滅エンドしちゃうくらいなら、逃げた方が勝算ありそうじゃない?

 この歳では働けないけど、それこそ孤児院とかどうかな。
 ああでも、それだといじめられて虐げられた挙句~ってパターンかな。

 あ、だけどワンチャン、ヒロインポジに成り代われなくも……ないか、さすがに。
 むしろどっかの変態オジジに売られても嫌だし。

「死にたくないし、もう逃げる以外の選択肢はなさそうね」

 そう思うのに。
 それが最善策だと分かっているのに。

 パパの顔がどこまでも頭の中にチラつく。
 どこまでもお人好しで、どうしようもない人だけど、少なくともアイリーンを溺愛してくれていた。

 どれだけ忙しくたって、時間を見つけて遊んでくれたし。
 食事も極力一緒にとってくれた。
 下手な絵だって褒めてくれて、寝る前には『愛してるよ』なんて言いながらおでこにキスをしてくれたっけ。

「なんでこうも、幸せなのよ。もっとさ、目に見えて不幸なら簡単に捨てられたのに。一人なら絶対破滅しないんだよ? 馬鹿じゃないの、本当……」

 きっと物語の中のアイリーンもそうだったのかな。
 パパのことが好きだから、捨てられなかった。
 そして共に破滅していったんだ。

「あー、もう。……逃げるのやーめた」

 私は立ち上がり、鏡を真っすぐに見た。
 そして私は私に宣言をする。

「パパいい人だし、助けちゃって一緒に破滅エンドから抜け出せばいいのよ。そんなの簡単でしょ」

 鏡の中のアイリーンは不敵に笑う。
 私がアイリーンなのだから、何も問題はない。

 大丈夫。上手くやれるわ。
 そう自分に言い聞かせ、まずは父の執務室へ向かうことにした。
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